早慶サッカーレポート

 6月29日の国立霞ヶ丘競技場で第56回目早慶サッカー定期戦が行われた。今年までの通算成績は早稲田の27勝11敗17分。この結果だけを見ると早稲田の方が優勢のように思われる。しかし最近3年間でみると1勝1敗1引き分けと五分である。高校時代に全国大会などで活躍した選手を多く集めた早稲田が、ほぼ付属校と暁星高校出身者で固めた慶応になぜ圧勝できないのであろうか。


 その原因は慶応のプレースタイルあると私は考える。慶応のプレースタイルは引いて引いて一発カウンターを狙うという中東の国でよくみられるものである。早稲田はこのようなプレースタイルをとるチームに弱い。事実、今年の前期・関東リーグ2部では慶応に1−2で負けてしまったのだ。この2点は早稲田の守備のミスからのカウンターとコーナーキックからの得点である。支配率は圧倒的に早稲田が高かったのだかこの2発のみにやられてしまった。


 前期リーグではこのようなプレースタイルをとる国際武道大学神奈川大学にも苦戦を強いられた。関東リーグ1部に昇格するためにはこれらのチームにも常勝できなければならない。実際今の早稲田ア式蹴球部は全国を征する力を持っているので、ここでつまづいてはいられない。今回の早慶戦はそのようなプレースタイルを崩すということに関しても重要な試合であったのだ。


 伝統の一戦は午後7時に幕を開けた。先制したのは早稲田。前半11分。エースFW矢島が左サイドを突破してあげたクロスのこぼれ玉を、右サイドの主将徳永がダイレクトで押し込む。この先制点は早稲田にとってとても貴重なものとなった。なぜなら引き気味のサッカーをするチームであっても、先制されてしまったら攻めなければならなくなるからだ。そうしたら一気に早稲田のペースに持ち込むことができる。実際、早稲田はその後何度もチャンスを作り出すなどして試合序盤の主導権を完全に握った。


 しかし早稲田は再三チャンスを作り出すものの、慶応のGK前川のファインセーブの連続に会いなかなか追加点をあげることができない。そうしているうちに徐々に試合展開が変わりだす。特に左サイドを慶応の根岸に突破されることが多くなる。そしてやはりそこから慶応にチャンスが生まれ、ゴール前での混戦からゴールを決められてしまう。早稲田にとっては総理大臣杯・明治戦以来、3試合ぶりの失点であった。


 引き分けに持ち込むことができた慶応は無理に攻める必要が無くなったので、再び引き気味のサッカーを展開するようになる。あまりにも引いてくるために早稲田のCB金守や山口がサイドを駆け上がるシーンも多く見られた。前半残り時間のほとんどは慶応陣地内で行われるものの、堅実な守備に会い得点をあげられずそのままハーフタイムへ突入した。


 後半になると早稲田ベンチは交代選手を次々と投入する。まず後半序盤に金田に代えて兵藤が投入される。ワールドユースで不調であった兵藤にとって、この試合は復活を目指すための大事な試合であっただろう。しかし兵藤はこの試合でも不調であった。相手選手への詰めが甘く、TVで観たような臆病なプレーを度々繰り返す。大榎監督にとっては期待外れとなってしまったであろう。後半18分には玉田に代えて高橋周太が投入され、松橋が左サイドへポジションチェンジする。高橋周太は前期リーグや総理大臣杯予選では大活躍であったので期待することができたのだが、この日の玉田はいい動きをしていたので交代させられたことが惜しまれた。後半35分になると、矢島に代えて期待の新人・渡邉千真が投入される。渡邉はデビュー戦以来出た試合では必ず得点を決めていたのだが、なかなか慶応の全員守備を突破することが出来ない。


 このまま引き分けで試合終了かと思われた後半43分、鈴木修人のスルーに反応した松橋がGKと1vs1の状況を作り出し、落ち着いてボールをゴール右隅に流し込む。劇的な試合展開に早稲田応援席は歓喜で満ち溢れた。松橋は総理大臣杯学芸大戦ではベンチからも外されていたのだが、この大舞台ではきっちりと仕事をした。MVPも獲得することができたので本人も大変喜んでいたことであろう。試合はそのまま終了し、早稲田が2−1で勝利をあげた。。


 試合内容は良くなかったが、なんとか勝つことができた。引き気味の相手に勝利できたことは大きい。多くの課題も見つかったはずだ。その問題点を修正してより強いチームを作り上げて欲しい。まずは総理大臣杯。決勝に進出すれば天皇杯に出れるので、是非頑張って欲しい。そして後期リーグでも首位の座を守り抜き、今年こそは1部リーグに復帰してもらいたい。